
2026-08-12
だにまる先生のデビュー単行本として2022年1月に発売された『この恋に気づいて』。約200ページの中に、表題作を含む複数の恋愛短編が収録されたオムニバス集です。レビューサイトでは5点満点中4.7という高評価を獲得しており、デビュー作でありながら多くの読者の心をつかんでいます。
表題作は、彼女に振られて落ち込む先輩を、後輩の辻中が励ましているうちに、それまで抑えていた気持ちがあふれ出してしまう、という後輩から先輩への恋心を描いた恋愛ものです。「励ますつもりが、気づけば自分の気持ちを止められなくなっていた」という展開は、王道でありながら誰もが感情移入しやすい構成になっています。
慰めているだけのはずが、いつの間にか自分の想いに向き合わざるを得なくなる——という心の動きの説得力が、表題作を単なる「先輩後輩もの」で終わらせない深みを与えています。
本作には表題作のほかにも、「僕は梅田さんに逆らえない」「ふたご盛り」「捨て猫彼女」といった、それぞれ異なるヒロインと関係性を描いた短編が収録されています。力関係が逆転したコミカルな関係、双子ならではのシチュエーション、健気なヒロイン像など、1冊の中でまったく異なるタイプの恋愛模様を読み比べられる構成です。
タイトルを見るだけでもバラエティに富んでいることが伝わってくるように、それぞれの短編で作風のトーンを変えている点も、飽きずに読み進められる理由のひとつです。
5点満点中4.7というスコアは、デビュー作としては非常に高い部類に入ります。複数の短編それぞれで異なる関係性・キャラクターを描き分けながら、全体を通して安定した読み味を保っている点が、この評価につながっていると考えられます。
1冊で複数の恋愛模様を読み比べられるオムニバス集としての満足度の高さは、これから作家買いを検討している読者にとっても、入り口として選びやすい一冊と言えるでしょう。
デビュー単行本でありながら、表題作と複数の短編それぞれで異なるトーンを描き分けられているというのは、決して当たり前のことではありません。1本の得意な型に頼るのではなく、複数の引き出しを最初から持っている作家という印象を受ける一冊です。
『この恋に気づいて』は、だにまる先生というお名前を覚えておきたくなる一冊です。デビュー作の時点でこれだけの評価を得ているということは、次回作以降でどのような関係性・キャラクターを描いてくれるのか、今後の展開にも自然と期待が高まります。
当サイト編集部による主観的な感想です。公式のレビュー・評価スコアとは異なります。
『この恋に気づいて』は、後輩から先輩への想いを描いた王道の表題作と、個性豊かな収録短編の組み合わせで高評価を獲得したデビュー単行本です。オムニバス集ならではの読み比べの楽しさを味わえる一冊としておすすめできます。← コラム一覧へ戻る